人前で上手に話せない。頭が真っ白になって身体が硬直する。
何か言葉を発しなければいけないのに、うまくいかない。
そんなシチュエーションがまたやってくる。そう思うだけで手汗が滲んで身体が震える。
生きた心地なんてしない。今すぐ逃げ出したい。
恥ずかしいし、怖い。苦しい。
緊張のメカニズム
緊張は、これから起こる出来事に対して、待ち受けている心の状態のことを指しています。
つまり
まだ事は始まっていないのに、”緊張するであろう”と予測している場合に引き起こされる現象なのです。
単純なケースとして、
お化け屋敷やジェットコースター、ホラー映画などは
確かに緊張はするけど、多くの人の前でスピーチをするより緊張してはいないはずです。
お化け屋敷では、怖い体験をした後、それが終わった時の安心を感じたいための行動なのです。
安心できることが確実に約束されているからこそ、安心して怖がることが出来ます。
逆に、人前でスピーチをする場合には、失敗するかもしれない。きっと恥をかく。と安心が得られない状況へ飛び込んでいかなければいけません。
これはとても恐ろしいことです。
生まれつき?
緊張する人の特徴の1つに”生まれ持ったもの”という特徴があります。
これは日本人に多く見られる遺伝子の1つで、日本人は欧米人に比べセロトニン(別名:幸せホルモン)の分泌が少ないという研究結果が出ています。
つまり生まれつき緊張状態に落ち入りやすい体質なのです。
周りを見渡してみて下さい。
あなたと同じように日本人は大なり小なり皆緊張しているんです。
恐怖というトラウマ
緊張してしまう原因の1つにトラウマという側面もあります。
過去の体験として心理的に大きな痛手を経験した場合、同様のシチュエーションに対してその時の心理状態がフラッシュバックするというものです。
例えば学生自体に人前で話をしたら、周りの友達に笑われ、馬鹿にされて、大人も助けてくれなかった。
そんな辛い経験をした後では、その光景が記憶から抜けず、その後何年も苦しみ続けることがあります。
愛着と安心
愛着とは、幼少期に親と子の間で結ばれる絆のようなもので、それは子供が自分は安全だと認識できる心理状態を構築することです。
多くは幼少期に母親の笑顔や、泣けば母親が助けくれる。といった保証を経験することで蓄積されていく感覚ですが、
虐待やネグレクトなど、親との間に愛着が育まれていないと、安心という状態が理解出来ないまま大人になってしまいます。
安心がない状態は、常に危険と隣合わせ、四六時中緊張している状態が続きます。自信がなくビクビクしてしまい、人と同じように生活することが難しくなってしまうケースも多くあります。
愛着を形成する前に大人になってしまうと、人の目を極度に恐れ、音や、動物、病院、公共の場に対しての不安が拭えません。
もし、
あなたがその感覚に共感できるようであれば、心療内科や心理カウンセリングを受けることを強くお勧めします。
それは想像を絶するほど苦しいことです。
遠慮せず、あなたの感覚に共感してくれる方の元をぜひ訪れてみて下さい。
自意識過剰という側面
緊張してしまう原因の1つに”自意識過剰”であるケースも見受けられます。
自意識過剰とは、
根拠のない自信がある状態とは異なり、
「期待に答えなければ」
「上手に振る舞わないと」
「失敗は許されない」
など、
専門用語では「公的自己意識」や「認知的評価」と呼ばれる概念なのですが、
緊張しそうなシチュエーションが近づいている状態において、
自らのハードルを上げ、上げた分だけ過小評価してしまうというもの。
「失敗は許されないから、こういう話をして、ここでまとめて、結論を言おう。だけど反論されるかもしれない。もしこれを反論されたらどうしよう。失敗してしまう。そしたら恥をかく」
などと自意識過剰な認知に対して、悲観的な自己意識に悩まされてしまい、
それが「公的」な自己意識、「周りの人の評価が下がるだろう」と低く見積もってしまうのです。
緊張しないために
テストや大会、プレゼンや発表の前に、なるべく緊張を抑えるためにはどうしたらよいでしょうか。
7つ紹介致します。
自己像を下げる
前述した自意識過剰による公的自己評価が下がってしまう状態を変えてみましょう。
これは難しいことですが、
周りの人はあなたが思うよりあなたのことを気にしていません。
と認識することが1つ。
もし失敗してしまっても、恥ずかしいのはあなただけ、周りの人からすればあなたが恥をかこうがどうでもいいことなのです。
緊張しない人の場合は、そういった場面においても「チャンスだ!おれはやれる!」と認識することができるのですが、その時同時に「失敗するかもしれないけど、失敗しても次に頑張ればいいし、たぶん失敗しない」
と、とてもポジティブに物事を捉えます。これは自己像が安定しており、他人の目を気にしていません。
例え失敗しようが誰も気にしないし、死ぬわけじゃない
同じように誰だって緊張するし、あの人だって大したことない
と、自己評価を自ら安定させ、プレッシャーを与えすぎないような意識に変えてみて下さい。
ジンクス
メジャーリーガーのイチロー選手や、政治家、歌手など、常日頃から人前でパフォーマンスをすることが仕事の彼らは、それぞれのジンクスを持っている場合が多いです。
特にイチロー選手は、試合当日の朝からバッターボックスに立つ前までの行動のほとんどにジンクスがあり、1つでも手順や、フィーリングが納得できないと、また最初からやり直すそうです。
それで成功する結果が出たとしたら、それを信じて次回も同じように行動することによって、前回の成功体験が大きな自信に繋がります。
場合によってはお酒を飲むこともアリです。
ダーツの場合、世界大会においてもリラックスするためにある程度のお酒を飲んでいいと言われています。
また、直前はなるべくネガティブなことを発言しないように気をつけましよう。
声に出すことによって、耳が言葉を捉え脳に送ります。人間はより多くの五感で認識することにより心理状態が大きく作用されますから、できれば明るいポジティブな言葉を耳にも聞かせてあげるようにして下さい。
同様にフェイスフィードバックと言いますが、鏡の前で笑った表情をつくることにより、視覚的にも明るい状況が飲み込め、暗い心理状態を晴れやかにすることが出来ます。
運動
緊張してきたら、スタートの直前に少しストレッチするなど身体を動かしてみて下さい。
緊張状態では、興奮作用のある交感神経が活発になります。これを身体を動かすことによって副交感神経が優位に働き、リラックスした状態に近づきます。
また一時的に体温を上げ、それが下がり始める瞬間に副交感神経が活発になりますから、自立神経が安定し心身の硬直がほどよく溶けていくことでしょう。
逆に、直前ギリギリまでに心拍数を上げ、アドレナリンを抽出する方法もあります。
気合と根性で戦闘状態に入るプロセスです。
大きく深呼吸したり、声を出してみたり、歌を歌ってみたり、
いずれもフィジカルな刺激を与えることにより、恐怖を和らげることが出来るかと思います。
手を握ってもらう
もし緊張してきたら、誰かに手を握ってもらって下さい。
ボクシングや格闘技の選手が試合直前にセコンドから両手を包み込むように握ってもらうのを見たことはありませんか?
これは心理学的にもとても有効な手段で、興奮や緊張状態で手を握られることによりかなりリラックスできると言われています。
ストレスが緩和され、穏やかな気持ちになります。
アメリカの研究においては、リラクゼーション効果の他に身体的な痛みでさえ緩和されるとの報告がありました。
瞑想・認識する・緊張を感じる
敢えて緊張を感じ、自分の心臓の鼓動や震えを認識してみて下さい。
身体の隅々にまで意識を走らせ、「緊張してるな」と、その自分を許してみてください。
できれば目を閉じ、ゆっくりと呼吸を繰り返しながら
身体の感覚に意識を研ぎ澄ますのです。
これは一種の瞑想状態に入ることなのですが、身体の感覚に集中することによりストレスが緩和され、不安や恐怖が和らぎ、
さらには集中力や思考、記憶力が増すと言われています。
今日のために色々準備してきたかもしれませんが、
その時ばかりは一回すべてを忘れ、身体にのみ意識を配ってみて下さい。
時間を数える
何かを数えることはとても有効な手段です。
できれば一定のリズムを刻む時計の音を1つづつ数えてみましょう。
時計の音は1分間で60回ですが、
人間がリラックスしている時の心音はだいたい60~90回程度ですから、
心音と同等、もしくは少し遅いくらいになります。
これを数えることによって脈拍が早くなっている状態が、少しづつ時計の音にシンクロするようになります。
結果、ドキドキといった心拍が安定し、緊張がほぐれるのです。
マッサージ
緊張を抑えるツボがあります。
どんな場面でも目立つことなく出来るので有効ですね。
場所は、
①手の甲、親指の付け根のやや下で、
親指と人差し指の骨が分かれ目の少しくぼんでいる辺りになります。
こちらを、反対側の親指で手のひら側から痛くない程度に押します。
②手のひらの中心
こちらも、反対側の親指で手のひら側から押し上げるように揉みます。
③手首、手のひら付け根からヒジに向かって5cm程度内側
反対側の手でやや強めにほぐすようにします。
最後に
いかがでしたでしょうか。
方法はいくつかありますが、いざその場面になると緊張しないようにすることはとても難しいですよね。
あまり心配しすぎないよう、失敗を恐れず、
リラックスできることを願っています。